骨盤底筋の鍛え方は「締めて、ゆるめる」の繰り返しから

先に、いちばん知りたい答えをお伝えします。

骨盤底筋(=膀胱や子宮、直腸を下から支えているハンモックのような筋肉のこと)は、「肛門や腟をキュッと締めて、ゆっくりゆるめる」動きを毎日くり返すことで、少しずつ働きかけていける筋肉です。

特別な道具はいりません。
仰向けでも、座ったままでも、家事の合間でもできます。

そして、まず知っておいてほしいこと。
産後や年齢とともにこの筋肉が頼りなく感じられるのは、多くの女性に起こる自然な変化です。
あなたの体が特別に弱いわけではないので、安心してくださいね。

トレーニングと並行して、日常の備えとして 吸水機能のあるショーツやインナーアイテム を取り入れる方もいます。
運動を続けるあいだの心強い味方になってくれることがあります。

なぜ骨盤底筋はゆるみやすくなるのか

そもそも、どうしてこの筋肉は変化するのでしょうか。
主な理由を整理してみます。

妊娠・出産による負担

妊娠中は大きくなった子宮の重みが骨盤底に長くかかり続けます。
さらに出産では、この筋肉が大きく引き伸ばされます。

産後しばらく、くしゃみや咳で尿がもれる腹圧性尿失禁(=おなかに力が入ったときに尿がもれること)を感じる方は少なくありません。
ある調査では、出産から4か月を過ぎても尿もれが続いた方が約3割いたと報告されています。

加齢と女性ホルモンの変化

年齢を重ねると、筋肉全体と同じように骨盤底筋の力も少しずつ落ちていきます。

加えて、エストロゲン(=女性ホルモンの一種)が減っていくことも、骨盤底の組織のハリに関わると考えられています。

日常的に腹圧がかかる生活

慢性的な便秘でいきむ習慣、重い荷物を持つ機会が多い生活、体重の増加なども、骨盤底に負担をかける要因です。

運動不足で「使えていない」

骨盤底筋は、意識しないと日常でほとんど動かさない筋肉です。
存在に気づかないまま何年も過ごすと、力の入れ方そのものが分からなくなっていることもあるんですよね。

今日からできる骨盤底筋トレーニング

ここがこの記事の中心です。
手順・回数・タイミングを具体的にお伝えします。

基本のやり方(まずはこの姿勢から)

最初は、力が入っている感覚をつかみやすい仰向けから始めるのがおすすめです。

  • 仰向けになり、両ひざを立てて肩幅くらいに開く
  • おなかや太もも、お尻には力を入れず、肛門と腟を体の内側へ引き上げるイメージでキュッと締める
  • そのまま5〜10秒キープして、ゆっくり全部の力を抜く
  • 力を抜く時間も同じくらいとり、これを10回ほどくり返す

締めるときに、おなかがへこんだり息を止めたりしていたら、それは別の筋肉が働いているサインです。
呼吸は止めず、自然に続けてくださいね。

慣れてきたら「速い収縮」も足す

ゆっくり締める動きに慣れたら、1秒だけキュッと締めてすぐゆるめる「速い動き」を数回加えてみましょう。

くしゃみの直前など、とっさに力を入れたい場面で役立つ動きです。

続けるコツは「ながら」に組み込むこと

いちばんの敵は、忘れてしまうことです。

歯みがき中、信号待ち、湯船につかっているとき——毎日必ずやる行動とセットにすると習慣になりやすいです。
1日2〜3回を目安に、無理のない範囲で続けてみてください。

変化を感じられるまでには数か月かかることも多く、続けること自体がいちばん大切です。
数日で結果が出なくても、どうか焦らないでくださいね。

フェムケア全体をどう生活に取り入れるかは、フェムケアの基本的な考え方とやり方をまとめた記事 もあわせて参考になります。

やってはいけないNGケア

  • 締めるときに、お尻や太ももに強く力を入れる(別の筋肉ばかり使ってしまいます)
  • 息を止めて、おなかに強くいきむ(かえって腹圧をかけてしまいます)
  • 一度に何十回もやって疲れさせる(少ない回数を毎日のほうが続きます)
  • 痛みや違和感があるのに我慢して続ける

セルフケアで変えられること・変えられないこと

ここは正直にお伝えしたい部分です。

骨盤底筋トレーニングは、自分の力で取り組める前向きなセルフケアです。
締める感覚がつかめてきた、以前より意識できるようになった、と感じる方もいます。

一方で、セルフケアだけでは対応が難しい状態もあります。
たとえば、量の多い尿もれが長く続く場合や、骨盤臓器脱(=骨盤内の臓器が下がってくる状態)が疑われる場合です。

トレーニングを何か月か続けても変化を感じにくいとき、それはあなたの努力が足りないからではありません。
ここから先は医療の領域、という線引きがあるだけなんです。

無理にひとりで抱え込まず、次の「受診の目安」を参考にしてくださいね。

受診の目安と、相談する診療科

こんなときは、セルフケアと並行して医療機関に相談することを考えてみてください。

  • 尿もれの量が多い、または日常生活に支障が出ている
  • 何か月かトレーニングを続けても、まったく変化を感じない
  • 腟の入り口に何かが下りてくる感覚や、ふくらみがある
  • 排尿・排便に強い違和感や痛みがある

相談先は、婦人科・泌尿器科のほか、「女性のための骨盤底外来」を設けている施設もあります。

デリケートな悩みだからこそ受診をためらいがちですが、こうした症状は珍しいものではなく、専門家が日常的に向き合っているテーマです。
「相談してもいいことなんだ」と思って、どうか気軽に足を運んでみてください。

よくある質問

骨盤底筋トレーニングは1日どのくらいやればいいですか?

決まった正解はありませんが、1回10回程度を1日2〜3回が目安として取り組みやすいです。
回数を増やすより、少なくても毎日続けるほうが習慣になります。

座ったままや立ったままでもできますか?

できます。
慣れないうちは感覚をつかみやすい仰向けがおすすめですが、コツがつかめれば、デスクワーク中や家事の合間など、姿勢を選ばず取り組めます。

効果はどのくらいで感じられますか?

感じ方には個人差があります。
数か月かけてゆっくり取り組むものと考え、短期間で判断せず続けてみてください。
変化を感じにくいときは、受診の目安も参考にしてくださいね。

妊娠中でもやって大丈夫ですか?

体調や経過には個人差があるため、妊娠中に始める場合はかかりつけの医療機関に確認してから取り組むと安心です。

まとめ

最後に要点を振り返ります。

  • 骨盤底筋は「締めて、ゆるめる」をくり返し、毎日少しずつ続けることが大切です
  • ゆるみやすくなるのは、妊娠・出産や加齢などによる自然な変化です
  • セルフケアで変えられる範囲と医療の領域には線引きがあり、気になる症状は早めの相談を

誰にも言えなかった悩みも、正しい知識があれば、今日から自分のペースで向き合えます。

自分の体をいたわる習慣づくりのヒントは、FemLifeのトップページ でも紹介しています。
無理なく、少しずつ始めていきましょうね。

※この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。
気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

参考

  • 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編『女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版』リッチヒルメディカル(2019)
  • 長島玲子ほか「周産期における骨盤底筋訓練の尿失禁症状に及ぼす影響の検討」島根県立大学出雲キャンパス紀要 https://ushimane.repo.nii.ac.jp/record/236/